兄信彦と一緒に交通事故に遭ったイサコは、一人意識を回復し兄の死を知らされたが、その現実を受け入れることが出来ず、再び意識を閉ざしてしまった。
イサコの肉体は回復に向かっているのに、意識は未だ現実に対応できていない状態を治療するために電脳医療が用いられたのだ。
理想の兄による心の治療
イサコの電脳医療に用いられた電脳空間は、イマーゴにより無意識の情報も含めてイサコ本人にとって理想の世界が作り上げられた。もちろん亡くなった兄信彦もイサコの意識から電脳物質化されていた。
そこでの兄はイサコの望みをすべて叶えてくれる存在であり、飽く事の無い遊び相手であり、悩みを打ち明けてもすべて聞き入れてくれる理想の存在であった。
しかし兄の役目は、自分は事故で亡くなっており、その現実を受け入れさせ、これからは自分に頼らずイサコ一人で生きていかなければならない事を伝える事にあった。
兄を慕っていたイサコは、別れの言葉を聞く前に兄を亡くしてしまった。この突然の別れがイサコの意識を閉ざしてしまった原因であろう。
イサコにとっては永遠に続く兄との時間の中で、その心の治療は順調に進んでいた。やがてイサコの中に兄との別れを容認する心が芽生え、お互いの存在を忘れないために母が作った人形を渡し、そこで治療は終わるはずであった。
しかしそこにイマーゴ能力のあるヤサコが、治療用電脳空間の一部であるコイルスノードのデンスケとともに迷い込んでしまったために、新たな電脳体ミチコが生まれ、イサコの治療は完了しなかった。







