あっちの世界の象徴的存在「ミチコさん」は、イサコとヤサコの心からイマーゴにより作り出された存在であった。
あっちの世界はイサコが兄を失ったショックを癒すための空間として用意された電脳空間であったが、そこは必然的にイサコの心から生み出されたもので満たされていた。
しかし、そこにイサコの治療とは関係のないヤサコが迷い込み、イサコの治療に当たっている兄の姿を借りた電脳体と出会ってしまったためにイサコは強い嫉妬をおぼえ、その感情に電脳空間が反応し、ミチコさんが生み出されてしまった。
イマーゴが具体化した心のエゴ
人の心とはいったいどのようなものであろうか?
人が人である限りおそらくその答えは永遠に見つからないのではないだろうか。定義づけできていない「心」がそれ自身を定義づけようとしているからだ。
ではイマーゴにより人の心からあっちの世界で電脳物質化されたミチコさんはどのような存在であろうか?
イサコの嫉妬心とヤサコの片思いをもとに生み出されたミチコさんは、おそらく強い独占欲を持っているだろう。
片思いという一方的感情と、自分一人で独占していたいと思っている兄の優しさが他の子にも向けられているという許しがたい嫉妬心が一つになったとき、それは兄を他人に渡さないという強烈な独占欲に変わったはずだ。
何物かを自分で独り占めしたいという感情は、おそらく誰しもが心の中に持ち合わせているであろう。いわば人間が持つ本質的感情の一つかもしれない。
その意味でミチコさんは、イマーゴが作り出す電脳体の中でも最も出現しやすい精神を持った電脳体であろう。
自己の利益のみを追求するエゴイズムに通じる独占欲に囚われたミチコさんは、ある意味人の心の一面を強烈に反映した存在かもしれない。









