デンスケは大黒市史跡博物館に残されていたCドメインで、イサコにより偽装のための封印を解かれたが、それによりサッチーに違法電脳体とみなされフォーマットされてしまった。メガマス社のサーバーからはその存在を消去されてしまったのである。
ヤサコは数年間一緒に暮らしてきたペットを失ったわけだが、ヤサコにとってデンスケはどのような存在であったのだろうか?
デンスケが残したもの
電脳ペットはバーチャルな存在である。その存在は電脳メガネを通じてしか見ることが出来ない。生のペットと違い、電脳メガネを外せばペットの側から何か行動を起こすことは決してない。
したがって電脳ペットをペットとして認めるか認めないかはまさしく飼い主の意思による。これはある意味、究極的に飼い主がすべての責任を負うことになる。電脳ペットをペットとして存在させるためには、常に飼い主がその存在を認識し続けなければならないのだ。この事は生のペットを飼うよりも、より積極的に関係を維持することを飼い主に求める。
そのようにして飼っていたデンスケを一瞬の内に消去されてしまったヤサコの心の中は、おそらく生のペットが時間を掛けて徐々にその存在を消し去る場合より、より深く悲しみが残ったに違いない。一瞬にしていなくなってしまったデンスケを思うとき、ヤサコは自問するはずである。自分にとってデンスケはどのような存在であったのか?また、デンスケにとって自分とはどのような存在であったのか?と。
ヤサコにとっては色々な形でより多く別れを経験している大人から、電脳ペットを現実の存在でないバーチャルな物として理解し、早く現実の生の世界に戻っておいでと言われてもすんなりと受け入れられるものではないはずだ。
デンスケを失った喪失感を克服するためには自らそれに立ち向かい、理解し受け止めることでしか解決できない。この事はバーチャルとかリアルとかの問題ではない。
このことがデンスケがヤサコに残した大切なことかもしれない。







